》りたるものなる事疑ひ無し。案《あん》ずるに此類《このるい》の石噐《せきき》は或は釣糸《つりいと》を埀るる時に錘りとして用ゐられし事も有るべく、或は鳥を捕《とら》ふるに際《さい》し束《つか》ね糸の端に括《くく》り付けられし事も有るべく、(此|捕鳥器《ほてうき》の事は別に詳記《しやうき》すべし)或は打《う》ち紐《ひも》を作るに當つて糸の錘《おも》りとして用ゐられし事も有るべし。製法《せいはう》は自然の扁平石《へんへいせき》の小さきものを採《と》り、又は石を打ち缺《か》き摩《す》り※[#「冫+咸」、82−上−26]らして斯かる形と爲し、其上に燧石抔《ひうちいしなぞ》の尖りたる角にて切り目を付けしものならん
●錘り石
圖中[#圖中」は底本では「國中」]|精製石棒《せい/\いしばう》中央の下に畫《ゑが》きたるは自然《しぜん》の扁平石にして、周縁相對する部に人爲《じんゐ》の缺損《けつそん》有り。此者の用も未た詳ならされと、前項《ぜんこう》に記したる糸掛《いとか》け石に於けるよりは更に太《ふと》き紐《ひも》を以て括《くく》りし者たる事殆と疑《うたが》ひ無く、從つて何物《なにもの》かの錘《おも》りに用ゐられしならんと考へらるるなり。此所《ここ》に畫きたるものは伊豆君澤郡|久連《くづら》村より出でしものなるが、類品《るゐひん》は諸地方《しよちはう》より出でたり。恐らくは網の錘《おも》りならん。(網の存在《ぞんざい》に付きては慥《たしか》なる證據《しやうこ》あり。此事に關しては再び記す所あるべし。)
●凹み石
錘《おも》り石の左方《さはう》に畫きたる火山石を人工《じんこう》にて橢圓体状《だゑんたいじやう》に爲したる者にして、上下|兩面《りやうめん》の中央には人工にて穿《うが》ち凹《くぼ》めたる穴有り出所は甲斐西八代郡大塚村なり。諸地方《しよちはう》より出でたる類品《るゐひん》甚多し。用法《やうはう》未だ詳ならず。之を造《つく》るには先づ適宜《てきぎ》の大さの火山石を拾《ひろ》ひ自然《しぜん》面の利用《りやう》すべき部は之を利用し、他の不規則《ふきそく》に高低|有《あ》る部《ぶ》は或は缺《か》き或は摩《す》りて全体《ぜんたい》を大なる牡丹餅《ぼたもち》の如き形とし兩面《れうめん》の中央部《ちうわうぶ》には尖端《せんたん》の鋭き石片《せきへん》又は鹿《しか》の角抔《つのな
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