頭の上に花籠をのせた花売の乙女《おとめ》二人、左より右へ。
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乙女1 花はいらんしょか? 花はいらんしょか?
乙女2 葵《あおい》の花はいらんしょか?
乙女1 葵の鬘《かずら》はいらんしょか? (右へ退場)
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入れ代りに右より登場した若い男。中央辺にてふと立止り、右手花売の乙女達の方をふり向いて、思案する。突然、衝動的に、頭の葵の鬘をむしり取り、ぽいと投げ棄《す》てるや、足早にもと来た右方へ逆戻り。
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女1 (右より、憂鬱《ゆううつ》顔で)ただ、妙《みょう》に頭が痛《いた》むのです。
男3 御修法《みずほう》をやっておもらいなさい。……北山の何とか云うお寺にとてもかしこい行者《ぎょうじゃ》さんがいるそうです。……ただ、この人は評判は非常にいいけど、(指で輪を作り)こっちの方をだいぶ高くとるらしいのでね。……それだけがどうも。
女1 でも、そりゃ、病気には代えられませんわ。
男3 とにかく、それは死んだ行平《ゆきひら》の物《もの
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