わ。自分の悪かったことに気がつきさえすれば、もうそれでいいの! 死んだ毛虫さんもきっと許してくれるに違いないわ! さあ、こがねまる。泣くのはお止め! お前はもう悪い子じゃなくなったの!
けらお (頭上を見上げ、突然、一種の畏怖《いふ》にとらわれたように叫ぶ)あッ! 蝶々だ! 蝶々だ! あんなにたくさんあげはが飛んで来た!
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右手の方から、無数の蝶が、群をなして飛んで来たらしい。皆いっせいに頭上を見上げる。
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雨彦 あ!……こがねまるが毛虫を殺したんで、怒ってやって来たんだ!
蝗麻呂 こがねまるをうらみにやって来たんだ!
けらお (叫ぶ)おらじゃねえよ! おらじゃねえよ! 毛虫を殺したのは、おらじゃねえよ!
こがねまる (助けを求めるように、泣声で)おら、本当に殺そうとしたんじゃないやイ。……おら、あんなあな[#「あんなあな」に傍点]に騙《だま》かされたんだイ。知らない内にいつの間にか殺しちまったんだイ。……おら、毛虫が憎《にく》らしくも何ともなかったんだ。……知らねえ内にあんなあな[#「あんなあ
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