な……(なよたけは死んでいる)なよたけ※[#感嘆符二つ、1−8−75]
[#ここから2字下げ]
文麻呂は呆然として、なよたけの死顔を凝視《みつ》める。……
背後の天空にいつの間にやら大きな満月がぽっかりと浮び上った。白色光の神秘な光芒《こうぼう》があたりに耀《かがよ》いはじめた。……そして、どこからともなく、「雅楽」のような不思議な楽音がかすかに聞えて来る。やがて、文麻呂は魂を失ったもののごとく、茫然として立上る。……彼の手から、なよたけの美しい衣裳の上に竹の枝がはらりと落ちかかった。……「合唱」が低く低く、聞えて来る。
合唱
かくばかり 憂《う》けく辛《から》けく なよ竹の
かくばかり 憂けく辛けく なよ竹の
花も常無き 現《うつ》そ身や
珠《たま》の緒《お》の惜しき盛りに 立つ霧《きり》の
失《う》せぬるごとく 消《け》ぬるごとく
おとめごは いま みまかりぬ
おとめごは いま みまかりぬ
なよたけは今や忘れられたもののごとく、文麻呂の姿のみ神秘な白色光の光芒に包まれて行く。文麻呂は、魔に憑《つ》かれたように、天空の彼方《かなた》を打ち眺める。……
月は白銀に輝く棚雲《たな
前へ
次へ
全202ページ中175ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
加藤 道夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング