文麻呂! あたしにもどうしてだか分らない。だけどもうあたしの幸福はこれっきりで終ってしまうような気がするの。……あたしはどこにも行ってはいけないんだわ。ここで黙ってひとりで待っていなければならないんだわ。
文麻呂 なよたけ! 何を待っているんだ!……しっかりおし! 何を待ってるって云うんだ! そんなことがあるもんか! そんなことが……
なよたけ (急に烈しく咎《とが》めるような調子になり)文麻呂! あんたはあたしがあんな車にのせられて都へ連れて行かれるのをどうして止めてくれなかったの? どうしてあたしが好きになった時、すぐにでも都を棄てて、あたしのところに飛んで来てくれなかったの?……ああ、そうすれば、あたし達はそのままずっとしあわせに暮せたかもしれないのに!
文麻呂 (次第に懺悔《ざんげ》するもののごとく)なよたけ、……許しておくれ。僕は自分の心を偽《いつわ》っていたんだ。不純な虚栄に心を奪《うば》われていたんだ。僕の心は濁《にご》っていた。僕にはお前のその清らかな透《す》き通った心が恐しかったんだ。お前に初めて逢った時から、僕はお前が好きで好きでたまらなかったのに、今日になるまで自
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