しいの。……
文麻呂 (不吉な予感を打ち消すように)なよたけ! 何でもないんだ! しっかりおし! お前はただ疲れているんだよ。……ねえ、なよたけ。それじゃ、お前がまた元気な体になるまでどこかで待っていてもいい。ここからそんなに遠くない瓜生《うりゅう》の山里に、衛門《えもん》と云う僕の忠実な爺やが瓜を作りながら暮しているんだ。僕達はこれからそこへ行こう! しばらくその家に厄介《やっかい》になって、お前がすっかり元気になってから改めて東国へ旅立つことにしよう!……ね? いいだろ?……さあ、なよたけ! とにかく、この丘を下りよう! (促すように、舞台奥を指し)あんな広々とした天地が僕達を呼んでるんだ!
なよたけ 待って、文麻呂! あたしは駄目! あたしはやっぱり駄目なんだわ! あたしはこの竹の林の外へ出てはいけなかったんだわ!
文麻呂 (ぎょっとしたようになよたけの蒼白《そうはく》な顔をのぞきこむ……)
なよたけ (空《うつ》けて行くように)……文麻呂!……誰《だれ》かがあたしを呼んでいるの。声のない言葉で、……何かほの白い寒気のするようなものがあたしを呼んでいるの。……文麻呂! あたしには
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