たしはもうこの世に生きるつとめをすっかり果してしまったんじゃないかしら?
文麻呂 何を云ってるんだ? そんなことがあるもんか! 僕達が愛し合うのはこれからなんだ!……お前は清らかな若竹の中に太陽に導かれながら、すくすくと育って来た。人の世の汚れも知らずに、清浄ないのちを生きて来た。お前はもう竹の里から離れたって立派にひとりだちが出来るんだよ、……なよたけ! お前はこれからは僕と一緒に強く生きて行くんだ。僕達の行手を遮《さえぎ》るものはもう何もありゃしない。この大空のように果しない愛の世界があるだけなんだ。僕達はこれからもっともっと愛し合って行くんだ。この上もない愛のしあわせを僕達だけの力で作り上げて行くんだ……
なよたけ (切ない疑惑をもって)文麻呂!……あたし達にこれ以上愛し合うことなんて出来るの? 今よりももっともっと愛し合うことなんて出来るの?……あたしには考えられないわ。これ以上の愛のしあわせがあるなんて、……あたしにはとても考えられないわ。
文麻呂 なよたけ! お前は何も知らないんだ。僕達が本当に愛し合うのはこれからなんだぜ。人間はもっともっと烈《はげ》しく愛し合うことが出来
前へ
次へ
全202ページ中166ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
加藤 道夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング