帰って行く所もないわ。あんただけなの。あたしを幸せにしてくれる人は世の中に、文麻呂、あんたひとりしかいないのよ!
文麻呂 なよたけ! お前は信じてくれるだろ?……お前の清らかな魂を信じているのは世の中に僕ひとりだけだってこと。……お前のためならばこそ僕は喜んで都を棄てた。光栄も捨てた。……償《つぐな》いも捨てた。……僕は世捨人《よすてびと》だ。僕はたったひとりだ。僕は世間の者達からは気違いとして葬られた。都では、ただ一人の正しいものをこう呼んでいる。……真実の愛を求めるものをこう呼んでいる。……なよたけ! どうして僕にお前を手離すことが出来たろう! 世間の者から何と云われたって、僕はただ、お前を愛さずにはいられなかったんだ!
なよたけ 文麻呂! でも、もういいの! もういいんだわ! 何もかももういいんだわ!(彼女の眼に露が光っている)……
文麻呂 なよたけ。……お前も泣いているね? (彼女の肩に両手を掛けて)もう何も心配することはないんだ。僕はこうしてお前の所へやって来た。これからは何もかも皆望み通りに行くんだ。僕達はもう一生離れることなんかないんだよ。いつまでもいつまでも二人は決して
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