っしゃる御方なのじゃ?
なよたけの声 文麻呂! 文麻呂!
文麻呂 (翁をふりかえって)僕の名はなよたけが呼んでいる! お爺さん! 僕の名はなよたけが呼んでいる!
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文麻呂、左方へ消える。
翁の姿は蒼い残像をのこして、徐々に闇の中に消えて行った……風の音も、闇の中に吸い込まれるように消えて行った。……闇の静寂。どこからともなく、斧の音がひびき始めた。それは不気味なほど、はっきりしたひびきをもって、無明の時を刻み始めたのだ。
合唱(ごく低く)
無常の風に 春の陽の
常世《とこよ》の緑 吹き消えて
今ははや いずこの方《かた》か……
常世の緑 吹き消えて
翁が影は失せにけり
夜の深淵《ふかぶち》に 跡絶えて
翁が影は失せにけり
(斧の音)
あとにただ、……
ひびかうは 時の音《ね》の
ひびかうは 時の音の
無明に刻む 斧の音……
ただ、白銀《しろがね》の
無明に刻む 斧の音……
(斧の音)
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わらべ達の声 (遠き挽歌《ばんか》のごとく)……さようなら! 文麻呂!……
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