翁 何を云っておられるのかな?……儂《わし》にはどうも貴方《あなた》のおっしゃることがよくのみ込めんのじゃが……
文麻呂 お爺さん! もう、これ以上僕を苦しめないで下さい。僕は道に迷ってしまって、ずいぶん探したんですよ。どこまで行っても、お爺さんの家は見えて来ないんです。どっちを向いても、あたりは一面の竹の林だけなんです。まるで、僕はみんなが申し合せて僕を騙《だま》しているんじゃないかと思ってしまった。……この竹の林までが、何だか僕を目の敵にして苦しめているような……
竹取翁 貴方は一体どなたじゃな?
文麻呂 ? ? ?
竹取翁 貴方は一体どなたなのじゃ?
文麻呂 (何やら不可解な神秘をひめた翁の姿にぎょっとして、その顔をまじまじと凝視《みつ》める)
[#ここから2字下げ]
深い沈黙――
不吉な幻聴《げんちょう》のごとくわらべ達の声が聞えた。
だまされた だまされた
あんなあな[#「あんなあな」に傍点]にだまされた
なよ竹は大納言の手先だぞ。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
文麻呂 (云い知れぬ不安にとらわれたように)……貴方は、……貴方はな
前へ
次へ
全202ページ中138ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
加藤 道夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング