こで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
文麻呂 (独白)風か!………
[#ここから2字下げ]
文麻呂は何やら急に耐え難い孤独感に襲われるのであった。懐《ふところ》より横笛を取り出して、親しい「曲」を奏し始める。澄んだ笛の妙音、風に伝わって、余韻嫋々《よいんじょうじょう》………舞台、しばらくは横笛を奏する文麻呂。
文麻呂、突然、何か不思議な予感に襲われたもののように唇《くちびる》からふと横笛を離す。耳を澄ます。――どこからともなく、こだまのように同じ曲が響いて、………消える。
文麻呂、不思議な笛の反響を解《げ》せぬ態度で、もうひとしきり吹いて、再び突然、唇から笛を離してみる。耳を澄ます。
――やはり、どこからともなく、同じ曲が響いて、………消える。文麻呂、もう一度今度は思い切り強く吹いてみる。――やはり、どこからともなく同じ音が反響する………
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
文麻呂 (不気味な気持に襲われて、すっく[#「すっく」に傍点]と立上り)誰《だれ》だ!………
声 誰だ!………
[#ここから2字下げ]
清原ノ秀臣《ひ
前へ 次へ
全202ページ中14ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
加藤 道夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング