はないのかい? 僕は家の名誉ってことを考えてるんだ。……別に自慢するわけじゃないけど、僕の父上だってれっきとした三位の官人《つかさびと》だ。……そりゃ、今僕が止めてしまったら、石ノ上はがっかりするだろうけど、僕あそれ以上にこんなことをしてたら世間のひとがどう思うかと云うことを考えてるんだ。僕達のやったことが後の世までも謗《そしり》を受けるようなことになったら、僕達だけの恥じゃ済まされないんだぜ。家の恥なんだ! 父上の恥なんだ! 石ノ上は、貴様のように世間の思惑《おもわく》ばかり気にしていたら何にも出来やしないぞって、よく云うけど、……それにしてもあいつのやることは少し乱暴だ。正気の沙汰《さた》じゃない。あいつは何をするんでも、慎重な判断なしにやり始めてしまうんだ。まるでもう馬車馬だ! あいつは完全に気が触れてるんだ! 僕は気違いと一緒にこんなことをするのはまっぴら御免《ごめん》だ! お断りだ!
小野 気違い!……おい、おい、清原、いくらなんでもそりゃ少しひど過ぎるじゃないか?
清原 僕あこんなことは云いたくないさ。云いたくないけど、だけど、本当なんだから仕方がないよ。あいつは気が狂って
前へ
次へ
全202ページ中109ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
加藤 道夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング