がピカリとひらめいたと思ふまに、何かゞくづれるやうな大音響がして、雲の中から大きな青い手が。
爪の長い手が、ふいに現れ電光のやうに下界に流れた。
そして手は、一時に彼女達の衣服を空に舞あげたとしたら、彼女達はどんなに狼狽することだらう。
もぐらもちがお日様に眼を射られた時のやうに、あわてゝ下水溝の中へ悲鳴をあげて裸を隠すだらう。
しかしそんな心配は不要だ。
女達といふものは、実に油断のないものである。色情狂が電信柱の蔭から、彼女をおそつたとしても、彼女達は膝をすぼめて、べたりと地面にすわつてしまふだけの用意はいつでもできてゐるものである。
――彼女達は何故裸体をおそれるか。
この問題は、色気のついた女達の口からは到底満足な答を得られない。
そこで中には、質の悪い大人達が、この種類の質問を発して、子供達の口からたづねださうとする。これはよくあることだ。
教育上よろしくないことだ。
私の幼年時代、ある大人が
――××ちやんは、誰から生れたんだい、お母さんからだらう、お母さんの何処から産まれたの。
私の顔を覗きこんだ、なんといふ卑怯な質問といふものだ。
しかし私は、
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