に、植た南瓜畑だ。
と、この茂みのどこかで私にむかつて語つてゐるやうな、幻想にも陥つた。
――少し神経衰弱の気味ではないだらうか。
私は心にかうつぶやき、白地の浴衣に着替へ、することもなしに机の前に、気むつかしい気持ちで坐つた、青丸と妻とを、その前にすゑて、理由のないことを、長々としやべりたてゝも見たい惨忍な気持ちになつた。
家根《やね》に巣をつくつてゐた、雀の子が、ある朝、天井裏に迷ひ落《おち》、チイ/\悲鳴をあげて、天井板をあるき廻つた、私はその逃げ場をつくつてやるために、天井板を一枚はづしてをいたが、雀の子は明かるみを発見して、果してそこからパッと室内に舞《まひ》をりた。
――すつかり、障子をしめきらなければ逃げてしまふぞ。
――茶箪笥のかげに入りましたね、こつちの方に顔を出しましたよ。
この出来事のために、私達は騒ぎ立て、バタ/″\逃げまはる雀の子を室中をひ廻し、妻もまた近頃にない、朗かに晴れた顔をした。
捕へた雀の子の足に、もみの布をゆはひつけて放してやつたが翌朝歯を磨いてゐた妻が、不意に頓狂な声をたてた。
窓際の柵の上に、前日捕へた雀の子が、もみの布を、
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