ずみ》を上手《じやうず》にとれるやうになれば……
さうだ さうだ
みんな本分《ほんぶん》をつくせばいいんだ
○
あ! 天|文台《もんだい》の庭でお父さんがこつちを見てゐる
早く行かう
走れ! 走れ!
○
ほう よく来た、何にをみんなでしやべつてゐたんだ
ニャンちやんとピチ君が天|文学者《もんがくしや》になれないつて悲観《ひくわん》してゐたんです
○
アハハハ それは考《かんが》へちがひぢや
ニャン子 お前のヒゲは何のためにある
このヒゲですか 鼠《ねずみ》をとるために大|切《せつ》なものです
○
では どういう風《ふう》に使ふか やつてごらん
ハイ 世間《せけん》では猫《ねこ》はどんな暗《くら》やみでも見えるといひますが嘘《うそ》です
少しも光のない暗《くら》い所では目は見えませんから
○
さういふ時にかういふ格構《かくかう》でヒゲをかうして床《ゆか》にさはつて歩いて鼠の居《ゐ》さうな所をさがすのです
○
だから人|間《げん》はわたしたち猫のヒゲを切つてはいけません
○
そらごらん 猫のヒゲはそんな立派《りつぱ》な使ひ道がある
ところで この人間のヒゲは何のために生へてゐるか
あゝわかつた 威張《いば》るためについてゐるんだ
ハハハおかしいな
○
ハハハ その通りぢや それからニャン子は足《あし》をなめたり 耳や鼻《はな》を何|度《ど》も洗ふときがあるね
ええ それは雪|降《ふ》りや嵐《あらし》がやつて来る前 お天気が変《かは》りさうになるからです
○
それごらん 天気の変《かは》り目をちやんと知るのは天|文学者《もんがくしや》より偉《えら》いんだよ
猫《ねこ》だつて 偉いんだなア
ほんとだ
そんなにほめられるとあたし恥《はづ》かしいわ
○
やあ ニャン子がほめられてすつかり恥かしがつてゐるよ
ニャンちやん そんな顔《かほ》をするとこつちが恥かしくなつてしまふよ
あれ、こんどはピチ君が恥かしがつてゐらア
○
(火星実験室《くわせいぢつけんしつ》)
ここが特別研究室《とくべつけんきうしつ》だ さあ みんなお入り
へんな建物《たてもの》だなあ
○
やあ おかしいなあ 中ががらんどうだ
なんだか薄気味《うすきみ》がわるいわ
さあ そこに丸窓《まるまど》や扉《とびら》があるから のぞいてごらん
○
やあ おどろいた ここの部屋《へや》は二|重《ぢゆう》になつてゐる
機械《きかい》がぎつしりあるわ
ここは何にをするところです
いま いろいろの実験《じつけん》をやつて見せやう
○
さあ みんなマスクをかけ給《たま》へ
ニャンちやん マスクのかけ方がさかさまだよ
あら さう
○
マスクつて変《へ》んな格好《かくかう》のものね
そのマスクは酸素吸入器《さんそきふにふき》にもなつてゐるんだ
みんなタコのお化《ば》けのやうだ
○
おや お父《とう》さんだけマスクをかけないんですね
わしは次《つぎ》の室《へや》だ 最初《さいしよ》この部屋《へや》を火星《くわせい》の状態《じやうたい》にする
○
何が始《はじ》まるんだらう
お父さん あんまり恐《こわ》いことをしないでね
なんぢや 科学者《くわがくしや》の子がそんな弱音《よわね》を吐《は》いて
○
もし危険《きけん》なことが起《お》きたら 扉《ドア》をあけてそとに出たらいい
○
説明《せつめい》はその壁《かべ》にうつる仕掛《しかけ》になつてゐる
みんな用|意《い》はいいか
イイデス……
なんだ 情《なさ》けない声《こゑ》を出すね
○
あれ お父《とう》さんが隠《かく》れてしまつた
やあ 機械《きかい》のうなる音がしだした
(ブルン ブルン ブルン)
テン太郎さん 大丈夫《だいぢやうぶ》かしら
○
(ブルルン ブルルン ブルブル ピューキャタ キャタ キャタ ホホホヽ)
?
?
あれまあ 機械が笑《わら》ひ出したわ
○
や 映写板《えいしやばん》に何にか映《うつ》つた
やあ これは面《おも》白い
(これからこの部屋《へや》の空気《くうき》をかき出《だ》してしまふ。)
○
(ガッタン ガッタン ガッタン)
(火星《くわせい》の直径《ちよっけい》は四千二〇〇哩《まいる》ある 地球《ちきゆう》の半分《はんぶん》よりちよっと長《なが》いくらいだ。)
○
あら? わたし体《からだ》が軽《かる》くなつてきた
おかしいなあ しやぼん玉《だま》のやうに軽いぞ
やあ 面《おも》白い 面白い
○
飛《と》んだり 跳《は》ねたり 愉快《ゆくわい》だなあ!
やあ 面《おも》白いなあ
いくらでも跳《と》べるわ
(火星《くわせい》の重力《じゆうりよく》は 地球《ちきゆう》の五|分《ぶん》ノ二しかない。だから君達《きみたち》の重《おも》さも五|分《ぶん》ノ二にへった。)
○
体《か
前へ
次へ
全16ページ中14ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング