らつたんだよ
そんなことないわよ いぢわる[#「いぢわる」は底本では「いちわる」]
親切《しんせつ》な看護婦《かんごふ》さんだな


困《こま》つたなあ トマトがお腹《なか》に生《は》へる病《びやう》気なんて
わたし 地|球《きう》へかへりたくなつてきたわ
駄目《だめ》だい 病気が治《なほ》らなければかへれないや


では あの地球からのお客《きやく》さんたちは 野外《やぐわい》病|院《ゐん》の方へ移《うつ》しませう
なるべく患者《くわんじや》を驚《おど》ろかさないやうにね
準備《じゆんび》はできました
[#改ページ]

火星《くわせい》の看護婦《かんごふ》さん


あなた方《がた》はこれから野外病院の方へ移《うつ》ります
どうです 体《からだ》の具合《ぐあ》[#ルビの「ぐあ」は底本では「ぐあひ」]ひは
どうも熱《ねつ》が下りません
外《そと》の病院へ行くんですか


では トマトの葉《は》つぱで三人とも目かくしをしてくれ
はい かしこまりました
どうするんですか
心配《しんぱい》だわ


そんなに心配《しんぱい》しなくともいいですよ
でも、わたし気|味《み》がわるいわ
あゝ 何んにも見えない
自動車を三|台《だい》用|意《い》
はい かしこまりました


用意ができました
では出発《しゆつぱつ》!


どの辺《へん》を走つてゐるのか さつぱりわからない
ここは運河《うんが》づたひに走つてゐるのです


野外病院《やぐわいびやうゐん》といふのはどんなところです
それはハイカラな病院ですよ


みんな離《はな》ればなれになつてしまつたわ
またすぐみんなと一|緒《しよ》になりますからね


さあ みなさん病院《びやうゐん》に着《つ》きました
この辺《へん》一|帯《たい》が病院です
だつて目かくしされてるから見えませんよ
クンクン 何にか良《よ》い匂《にほ》ひがする
トマトのやうな匂ひがする


さあ この入口から階段《かいだん》を下りませう
ころばないやうに


なんだか地|面《めん》の下を歩いてゐるやうだ
さうなんです
わたし いやだわ
心《こころ》細いね


長いらうかだなあ
いやになつてしまふわ
もうすぐ地|上《じやう》に出られます


さあみなさんもう着《つ》きました
葉《は》つぱの目かくし取つていいですか
まだ まだ


あなた 
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