この台《だい》の上に立つてゐてください ころばないやうに
やあ体《からだ》が上へあがるやうだ
(ぶるん ぶるん ぶるん)


お次《つぎ》ーあなた さあ、しつかり立つて
よし スイッチをいれてくれ給《たま》へ



(ぶるん ぶるん ぶるん)
やあ 天|国《ごく》へゆくのか 地|獄《ごく》へゆくのか わからない


さあ猫《ねこ》のお嬢《ぢよう》さん あがりますよ
あたし こわいわ
心配《しんぱい》しなくてもいいのです


(ぶるん ぶるん ぶるん)
あゝ こわいー


さあ 仕事《しごと》がすんだ 帰《か》[#ルビの「か」は底本では「かへ」]へらう
あの病《びやう》人たちは 地|球《きう》の病人なんで骨《ほね》が折《を》れますね
どうも 火星《くわせい》の病人とは勝《かつ》手がちがひますね


わつ こんなところに出てきた
これはガラスの筒《つつ》の中だ
みんなはどうしたらう


あらまあ! みんな こんな容物《いれもの》に入れられちやつた


うわあ みんな ちりぢりばらばらになつてしまつた
テン太郎さーん 早く救《たす》けて下さい
僕《ぼく》だつて出られないんだよ


こりや いくらあばれても駄《だ》目だ くやしいなあ
よし! ここを出たらトマトたちめ みんな踏《ふ》みつけてやるから
わはあ 地|球《きう》のお客《きやく》の喰《く》ひしん棒《ぼう》
種《たね》までたべたいやしん棒
ずゐぶん貴方《あなた》たちは意《い》地わるね さうのぞくもんぢやないわ
お腹《なか》にトマトが生《は》へるとさ
うわあ、これぢや手も足《あし》も出ないや とんだ野外病院《やぐわいびやうゐん》に入れられてしまつた


おや お医者《ゐしや》さんがやつてきた
どうです 火星《くわせい》の病院《びやうゐん》はなかなかいいでせう
ちつともよかないわ
早くこんなとこ出してよ
ははあ おとなしくしてゐませんな


お医者さん ひどいですよ こんなところに押《お》しこめて
いや さうではありません 地|球《きう》にだつて温室《おんしつ》といふのがあるですよ


どれ診察《しんさつ》しませう
うわッ!
そう こわがらなくてもいいですよ
だいぶよろしいやうですな


こんどはアーンと舌《した》を出してごらん
アーン


いや なかなかりつぱな舌ですな
いや みごと、みごと

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