せう


やあ、火星人《くわせいじん》の行列《ぎやうれつ》だ
みんな妙《めう》な格好《かつかう》をするわ
何か歌《うた》つてゐるよ
あれは あなた達《たち》を歓迎《くわんげい》してアイサツをしてゐるのです
[#改ページ]

火星《くわせい》の首都《みやこ》ミルチス・マヂョル市《し》


これから 市街《しがい》を御案内《ごあんない》いたしませう
ここの街《まち》は なんといふのです
火星の首都《みやこ》です ミルチス・マヂョル市といふのです


ごらんなさい この素晴《すば》[#ルビの「すば」は底本では「すばら」]らしい火星の運河《うんが》を
大きいなあ
なんて立派《りつぱ》なんでせう
この運河はまつすぐだい


この運河《うんが》はなんに使ふんですか
火星《くわせい》では一年に数回《すうくわい》大|洪水《こうずゐ》があるのです、そのときに畑《はたけ》に水をやるんですよ


あの畑にはなにが植《う》へてあるんです
トマトですよ
それから何にがあるの
トマトよりありませんよ
おどろいた あの畑がみんなトマト


さうですよ 地|球《きう》ではパンとか米《こめ》とかが常食《じやうしよく》でせう、火星の人|間《げん》は トマトだけよりたべないんです
トマトだけしかたべないから 火星の人は大きくならないんだわ
きつとさうだよ
でも体《からだ》が小さくても 智慧《ちゑ》があるようだな


ふふふ 智慧は地球の人に負《ま》けませんよ、そら あの人たちをごらんなさい
おや?
頭《あたま》の大きな人と
頭の小さな人とがやつてきたね


火星人は 頭の大きい人はものを考《かんが》へてばかりゐるんです
頭の小さい人は?
小さい人は 働《はたら》いてばかりゐるんです
頭の大きい人の考へたことは
頭の小さい人がどんどん作りあげてしまふのです


やあ トマトの収獲《とりいれ》だ
ほら いま面《おも》白いことが始《はじ》まりますよ
あら トマトを運《はこ》び出したわ


火星《くわせい》では一日に二|回《くわい》 食物《しよくもつ》を市民《しみん》に配《くば》ります
やあい みんな窓《まど》から首を出した


ほら、あゝして下から投《な》げるのですよ
やあ上手《じやうづ》だなあ


うけとるのもうまいわね
あんな高いテッペンまで上る
僕《ぼく》もトマトを喰《た》べたい
前へ 次へ
全32ページ中12ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング