なあ 好《す》きなんだけれどなあ……
○
ほら 合|図《づ》をすると投《ほう》つてくれます
やあ投げてくれたぞ
上手にうけとれ
○
おいしい おいしい
舌《した》が落ちさうにうまいわ
火星のトマトはうまいぞ
○
向ふの建物《たてもの》が市役所《しやくしよ》
その左《ひだり》の曲《まが》つた建物は何んです
建物ではありません あれは火星の天|体《たい》望遠鏡《ばうゑんきやう》です
えつ望遠鏡? すごいんだなあ
○
ぢや、あそこが火星《くわせい》の天|文台《もんだい》ですか
さうです 行つてみませう
○
御紹介《ごせうかい》します こちらが火星天文台の所長《しよちやう》さんです
僕《ぼく》 星|野《の》テン太郎です
わたし 星野ニャン子よ
僕は 星野ピチです
○
僕のお父《とう》さんは 地|球《きう》の天文台で研究《けんきう》してゐます
これはこれは ようこそ 星野さんは私よく存《ぞん》じてをります
あれつ?
○
こないだは あなたのお父さんと月野|博士《はかせ》と髯《ひげ》のひつぱりつこをやりましたね
あれつ? どうして知つてゐるんだらう
○
よく知つてゐますよ あははゝゝ
地球の出来|事《ごと》は 火星からは、みんな見えるのですよ
おどろいたなあ………
○
なにも驚《おどろ》くことはありませんよ
みなさん、この天文台の設備《せつび》を注意《ちゆうい》して見て下さい
すごいなあ……
○
テン太郎さん あなたのお父さんは どんな望遠鏡《ばうゑんきやう》をお使ひになつてゐますか
いろいろあります 口径《さしわたし》六|吋《インチ》のと 大きいのは二十四|吋《インチ》のと
火星のは 地球のの千|倍《ばい》も大きいのを使つてゐます
○
ぢや地|球《きう》の出来|事《ごと》は なんでもみえるんだなあ
さうですよ さあ一つ望遠鏡《ばうゑんきやう》をのぞかせてあげやうか
○
さあ テン太郎さん ごらんなさい
アッ? お父《とう》さんだ
わたしにも見せて
僕《ぼく》にも
○
あなたのお父さんが 何にかしきりに計算《けいさん》してゐるでせう
ほんとにさうだ
やあ 手|帳《ちやう》の上の数字《すうじ》まで見える
○
お父さあーん 僕です テン太郎です
あははゝゝ 呼んだつて聞えませんよ
わたしにも見せて
○
さあ 望遠鏡の方|向《かう》をかへて見ませう
あら
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