どは、「時局ものを書けば、キハモノだといつてその努力の何ものであるかさへ考へてみない不親切極まる寸評の横行は、これこそ時局身中の虫けらである――」といつてゐるが、それは少しヒガミ過ぎである、最近従軍作家が妙に「大所高所に立つてゐるのだ」とか「時局身中の虫けらだ」とか、第三者に向つて嵩[#「嵩」は底本では「笠」と誤記]にかゝつた言ひ方をするやうであるが、従軍作家がさういふ高飛車な態度でゐる間は寸評家の跡は絶えないだらう、時節柄作家は、特に従軍作家は、謙虚な態度であるべしだ、さうでなければ人間味の強い時局ものは書ける筈がないと思ふが如何――。


文壇の警官
 阿部氏の頽廃取締役

 ▼改造新年号の『文化時評』で阿部知二氏が事変下に於ける国民の『頽廃、享楽面』を取締る政府のやり方に就いて意見を述べてゐる。阿部氏に言はせれば『人間の愉楽への本能を根絶し得ぬかぎり、長期に渉る根本的方法は、その愉楽の質を向上させる他になく――』といつてゐる。しかしかういふ言ひ方は、阿部氏が作家でなければ通用する言ひ方である。
 ▼『本能の根絶』とか『愉楽の質の向上』などといふものが、いつたい出来ることなのか、出
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