作家が政治家と、社会や文学の発展のために談合することは、結構なことである。有馬農相が農民文学者と、お茶をすすつて、政治と文学のために一夜を会談するといふことは、たしかにこれまでの政治家には珍らしい砕けたものがある。
▼土の文学のために、農林大臣が乗り出した。それでは商工大臣は何をしてゐるのか。日本の『店員文学』樹立のために出馬しないのか。そして逓信大臣は、逓信従業員のための文学に――それぞれ各大臣は作家を動員していゝ筈である。
▼しかし政治家と作家、この両者の斯うした関り合ひから、如何なるものが生れるかは疑問である。政治家はその政策の遂行の樋として文学を利用しようとしても、果して順調に水が流れるかどうか怪しい。また文学者は政治家の力を借りて、真の文学をつくらうなどといふ功利性はやめた方がいゝやうだ。
▼真に政策的に多忙な政治家なら文学者とものの一時間としやべつてゐる暇などあるまい。また文学者も同じことである。さうしたことに両者がエネルギーを消費してゐるとは驚ろくべきである。政治上のジレッタントと、文学上のジレッタントとの会談、多分にさうした性質を帯びてゐる。
▼文学者の最近の著
前へ
次へ
全40ページ中23ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング