なものの内部に於て抵抗、排除、抗争、建設などの今こそ行はれる実践期ではないか、今に始まらぬが文化的な面に於ては停戦や休戦と呼ばれることなどはもともとなかつたのだ。社会現象は往々にして作家活動を粗雑なものにしてしまふ場合がある。農村小説などに喰ひ下る国内的な作家なども尊敬したいものだ
生死を越えず
ペン部隊海軍班帰る
▼日支事変の現地視察に赴いた海軍班従軍ペン部隊の一行もどうやら無事に御帰還になつた。今回のペン部隊作家達の出発に先立つてこんな噂が流布された。「当局者の方では今度の作家のうちから二三人は死んでもらふつもりださうだ」と。勿論それはデマであるが、根拠のないこともあるまい。作家が厳格でなければならない筈の死に対する理解の態度が、作品の上では甚だルーズな態度で描写されてきた、その事実はこれまでも多い。殊に大衆作家はヱイ、ヤッといふ掛声だけで相手を斃してしまふといふ簡単さで済してきたものだ。
▼なるほど読者はそれでもすむしそれでも面白がつてゐる。しかし読者の心はさういふ作者の死の扱ひ方に対する不真実に抗議を保留してきた筈である。作家は只読者が面白がるといふ部分だけに喰ひ下
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