変は本格化した。
 ▼当局に戦地見物でもさせて貰はねば「日本的とは何か」の持ち廻り作家たちは、全く救ひのない立場に立つところであつたらう。文士の労働奉仕である戦線従軍が、大量に行はれたが、日本的問題や、民族文学の問題はこれらの作家が帰つてきて、また形を変へてやかましく囀られることだらう。しかし従軍作家の顔ぶれを見ると、消費文学の作家丹羽文雄氏のやうな、又それと類型の作家が参加してゐるのは、自ら戦地お土産の如何なるものであるかといふことは大体想像がつく。
 ▼我々はさういふ意味で全幅的な期待をこれらの作家にかけるわけにはゆかない。従軍も肝腎だが文学に於ける国内的な状態などもこの際充分観察して、建設的な立場に立たなければならない。幸ひ最近の現象で単行本の刊行も盛なやうであるし、書き下し長篇も出てゐるし、この種のものの書き下し長篇も出てゐるし、此種のものゝより旺盛化こそ望まれる。理論活動などもこの際本腰を入れて仕事が行はれていゝ「長期建設」などといふ言葉そのものからは何等指導原理は引き出されないが、文学の世界にそれを適用するときは自ら別な働きが加へられて多分に建設性が必要となる。
 ▼文化的
前へ 次へ
全40ページ中17ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング