伝はつたためしはない、世評に答へるための幾分の良心的な言ひわけであるかのやうに、展覧会後に伝はるのである。
 ▼一部の進歩的分子が偽日本主義分子を反撥してゐるのは事実だが、さてその進歩的分子なるものの進歩性が問題である、今のところの見透しでは、正統シュール・リアリズムを自称する一派が進歩的側に立つてゐる以外に、其他に進歩的分子は見当らないのであるから、毎年のやうに分裂する、分裂するといふ説が巷間に伝はつて、それが出来ない理由の中には、これらの自称進歩分子の実力の薄弱性が、一年延しに分裂説を引のばしてゐるだけだ、時間が経てば所謂進歩的分子のチョッピリとした尖鋭部分も磨滅し、またぞろ仲良く展覧会を開く位が関の山だらう。


文学待つたなし
 小林秀雄君へ一言

 ▼文学界五月号の告知板欄、小林秀雄君が僕に一言してゐる、僕が同君のドストヱフスキイ論に曾つて若干の注文をしたことに対して「それは僕の仕事が終つてから何とか言つて貰ふことにしたい」と不服を言つてゐるが、小林君のこの甘つたれた調子は、少くとも「文学界」といふグループの温床の中でだけは通用するだらうが、其他の所では通るまいと思ふ、文学上
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