小熊秀雄全集−20
大波小波
小熊秀雄
独立美術分裂説
次は誰が脱退するか
▼独立の林重義も遂にシビレを切らして脱退した。当然の現象である。今年の独立美術展に就ては、一般観賞者はいよ/\この団体のマンネリズムに失望した。出品画家もそれを認めてゐた筈だ、たゞこの団体の一部の会員は『さう飛躍的に進歩ができる筈がない、幾分ではあるが前回より、素質が向上してゐる――』といふ、この言葉位頼りない、我が田を賞める態度はない。世評を塗りつぶさうとする合理化の自己弁護以外ではない。独立内部に如何なる特殊的事情が潜んでゐやうと、大衆はそんな事情は問題ではない、具体的には『面白くもない展覧会』であつたといふ一般的批評が決定的なものである。
▼出品者にむかつて、号数の制限といふ進歩的団体にふさはしからぬ規定をつくつたなどは、明らかに独立内部の弱化面を曝け出した、出品画の大きさの制限によつて、どれだけ出品者がそれによつて内容的な実質的な絵を描いたかは問題だ、カンバスの枠の大きさの制限は、絵具屋の絵具の売れ高を幾分減らした位のものであらう。
▼最近巷間に伝はる独立美術の分裂説も、展覧会前には何時も
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