の写実的な方法のものには、テーマが明瞭で、そのテーマも然も社会的な意味をふかく含ましたものが多く、次の期間には、その画風が、美人画であるといふ理由だけで、松園氏は浮世絵的な方法と接近していつた。しかもテーマを作画方法に加へずに絵をまとめあげようとするときには必然的にその方法だけが、作者の考へ方の大部分を占める。柱をもつて人物を切るといつた絵画上の苦心の傾向に漸次移動していつた。何を描かう、どういふものを描かうといふ組み立てなしでも、形態上の美は組み立てられる。
 完全に造形的立場に立つたとき、松園氏の作品は社会的テーマからは孤立してしまつたそこにはたゞ線の運びの苦心、画面の空白の効果、小雨をサラッと降らすとか、桜の花びらを三片ほど地面にちらばすとか、襟足を極度に美しく描くとか、主題の上では凝ることをしないで、作画方法の上で凝るといふ方法に変つてきたのである。したがつて過去の絵は、その作品は絵画的であるとゝもに、歴史画、風俗画としても存在するが最近の松園氏の作品は、全く絵画的意図から出発して、絵画的方法に帰した仕事といふべきであらう。松園氏の作品の線の動き、連絡、切断等に注意してみるとき
前へ 次へ
全419ページ中93ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング