、過去の日本の生々しい雰囲気なのである。これらの作品は、今では単なる歴史画としてみても価値あるものなのである。「人形つかひ」では、現代の娘とは似ても似つかぬ内気な娘が、そつと覗きこんでゐるし「花ざかり」では婚期の円熟した娘であらうが、尚母親の後にしがみついて、美しい羞恥を示してゐる、さういふ情景や、情趣は現代では全く見ることが不可能である。
街頭の靴磨きに、足を差出して靴を磨かせる現代娘気質とはおよそ遠い世界の娘達の出来事を、松園氏の画をみることに依つて、我々はそれを再現して感ずることができる。然も松園氏の狂ひのない描法は、当時の雰囲気を、現在に於ても、狂ひなく伝達する、芸術の妙味とか、芸術の価値とか、芸術の永遠性とか言はれるのは、そのことを指して言はれるのである。作品が、出来た時と、それを第三者が見た時と、その時、時間、空間を超越して、その描かれた当時の現実の生きた証明がその作品で為されたときに、その作品の芸術品として優れたものであることを示すのである。
上村松園氏の作品は、現代作品から過去に逆行すればするほど、その作品の主題は明瞭であるし、優秀作が多い。そして浮世絵的方法なども
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