うである。第二の不思議は、百貨店の展覧会、作者御本人が知らないのに、出品されてゐたり、個展が開かれてゐたり、第三には、第四にはとその美術界の不思議を数へたてゝくれば、七不思議にとどまらないやうでもある、しかしこの不思議に就いて論じて行くにはこの欄がその場所ではない、機会を見てこれらの不思議に対して、はつきりとした文章を書いてみたいものである。
 何故、日本の美術界に批評の厳正が失はれるかといふ不思議を解くことなども、時節柄、急を要することであらう、閑話休題。
 ただ私は美術界の七不思議の一つに、一人の人物を加へたいのである、それは奥村土牛氏である。何故に奥村土牛氏が画壇的存在として不思議の一つであるか、人間の保証もついてゐて、絵の定評もあり絵の値段もなかなかいゝ、所謂世間には好評嘖々たる立場にある土牛氏に、何の不審な個所があるだらうかと、或は疑ひを抱く人もあるかも知れない。
 さういふ人に対して、私がかう質問して見たとする。
「奥村土牛の作品をどう思ひますか」
「実に彼の作品はいゝ、神品だ、実にうまい」と相手は答へる、そこで私は更に質問を押しすゝめて、
「何故に神品か」とたづねてみる、
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