風の変化は、ピカソ的変貌の仕方とは勿論ちがふが、日本画家としては珍らしく、作風上の飛躍を、大胆に試みる作家である、しかしこの変貌時代は漸次去つて、十二年の院展『麓の雪』十三年の院展『山の夜』には、作者の心理的安定を、その作品から感ずることができる、郷倉氏は『山の夜』あたりを一転機として、実力発揮の時代に入つたものとみて誤りがなからう、言ひかへればこれまでの郷倉氏は、その自己の実力の出しをしみをしてきた作家といふことも出来るのである、我々の作家にのぞむものは、その野心作である、実力発揮といふことの本質的な言ひ方は、さうした野心作に作家が入つてから用ひられるべきものだらう。
郷倉氏は、画風の上ではいかにも感情的、感性的な仕事をしてゐるやうに、我々の眼に映ずる、しかし実はその反対のものが、氏の認識手段として多くはたらいてゐるのである、つまり知性的なもの、悟性的なもの、が制作にあたつて重要な働きをしてゐる、郷倉氏が仕事の上で、奔放性を発揮しようとしても、悟性がこれを強く押へてきた、近来それが人柄の上にも、年輩の上にも、成熟期に入つた感がする、今後は何の懸念もなく、感性も悟性もその赴くまゝに自
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