なく、それを持ち出して友人に借すと、一日のうちで幾人かの子供の間を、非常なスピードで回覧される、卑俗を感じながら、親達はそれ以外の、種々の利得をこの赤本から得てゐる、残念なことには全く教育的でないといふ、一事だけが残つてゐる。
 内務省の強硬方針で、もし現在漫画が廃滅されてゐたとしたら、何の問題もない、しかし漫画は子供達を無性によろこばしてゐたといふ事実は、この世から漫画が影を消した後でも、さうした事実のあつたことだけは問題として残るだらう、子供達はそれにかはる他のものに転じてゆくだらう。ソログープの子供を扱つた小説で、牛殺しの父親をもつた小さな姉妹が、母親の留守にそつと庖刀をもち出して『牛殺しごつこ』をやる、姉は父親が牛を殺すやり方そつくりに、妹の首に庖刀を加へるという筋であつたが、子供達はどのやうな恐怖すべき遊びをでも案出する、『自爆自爆』と叫んで二階から飛びおりて怪我した子供があつたとか、ないとかいふ、この子供は新聞記事を読んでゐたに違ひない、子供読物がこの世から姿を消しても、子供自身は決して困らない、この連中は色々な遊びを考へ出す、大人の講談本でも結構読む、子供漫画が廃されない
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