ろで、子供達はそのことを、ちやんと知つてゐる――といつてゐるが、トルストイのいふやうに家庭と社会との中間に、宙ぶらりん的な存在を、学校が果しつゝあるやうな気がする、子供達は教科書の硬さによつて精神状態を硬化することを、漫画といふ課外読物の、弊害的な柔らかさに、喰ひついて、精神を中和させてゐるかのやうである。

    四

 内務省と、出版業者との最初の会合のとき、内務省図書課の方針では、かういふ悪いものが、あるからいけないのだ、といふこの世から漫画を絶滅してしまはうといふ強硬意見をみせた、すでにその卑俗性は頂上に達し、改革の余地なしといふ見解をたてたのであらう、すると席上で、出版業者側が驚いて、漫画の廉価な立場と、無産者の子供のための出版――といふ社会的意義を主張した、そこで内務省もその立場を是認して、それでは内容を改革しろといふことを業者に要求した、現在市場に現はれてゐる商品のいろいろの価格のうちで、五銭、十銭などといふ単価のものは、価格が安いといふ意見だけでなく、社会的意義が大きい、しかし漫画はキャラメルのやうに、舌の上では溶けない、子供達は一冊の本を何度も繰り返してよむばかりで
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