も突拍子もない高価な取引が行はれた、然しすべての日本画家がその作品が売れるわけではない、矢張り少数の「選ばれた者」だけで、依然として物質的不遇な作家は多いわけだ、ただ事変下において、日本画もまた完全に商品化の路を辿つたといふことである、従つて制作を刺戟されて、作品が大量に描かれ展覧会も頻りに行はれ、有名無名に拘らず、この制作刺戟の恩恵にだけは浴したわけである、その機会を唯一のものとして、まるで株の売買のやうに、自分の作品を売りに出す一方の作家もある、この種の作家は乱作してゐる、制作刺戟を唯一の勉強時とばかり、良心的な研究作品を発表してゐる作家もある、斯ういふ時期には、また画壇でも政治的工作の多い時であるから、絵もろくに描かずにその方面に心を使つてゐる作家もある。
最近の日本画壇の一問題としては、横山大観の個展であらう、海と山とに因む二十点の作品は一枚二万五千円宛に、計五十万円に売れ、陸海軍に分割して、寄附した、まことに彩管報国を実践したわけである、この作品展は事変下の制作刺戟をもつとも有効に、芸術的情熱と、政治的意義とを捉へることに、ふりむけて成功したものといふことができるだらう、芸
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