作品に誰かが加筆したものとしたら、日本犯罪史に新しい一頁を加へるところの新犯罪人の出現です、芸術犯とも呼びませうか、それともそれは私の直感の誤りであり、単なる白昼夢であつたとしたらむしろ日本の芸術家のために喜びとします、しかし事実であつた場合には、文展は既に芸術の聖殿ではなく、欺瞞的な手品師の小屋と何等変りがないでせう、問題は『三人の女』の内一人の寝てゐる女の股の線が消えてなくなつてゐるといふことです、単なる一本の線ではありますが、問題は単純ではないでせう、公衆の面前でこの詐術的方法がゆるされるものでせうか、誰がその責任を負ふべきでせう、一切の問題を白紙にかへしても、橋本明治氏よ――貴方は私一人をこのやうな公開状を書かせるほどに、錯誤を与へたことだけは、確かです、数万の観衆、それから文部当局、審査諸君、画家諸君、新聞、美術雑誌記者、美術批評家諸君、それから作者である橋本氏その人、これらの多数の人々が、描かれてあつた線が、いつの間にか、何者かによつて胡粉で塗りこくられ、ぼかされてあつても知らず、たつた一人私がそれを知つてゐたとしたら、こんな快事はまたとありますまい、然しこれは問題の性質上
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