かといふことをさへ吟味しその封建的要素の否定のために、物体を直線の上に描き添へて古い線に新しい要素を与へる。彼は殊に『曲線』といふものの日本的性質、その心理的な救ひ難い習性の表れといふものに[#「に」に「ママ」の注記]教へをよく理解してゐるから、それに対しての強い反撥を企てるのである。新しい日本画の確立とは、何も特別にテーマの中に、或は色彩の中にのみ変革の方法があるとはかぎらない。彼の場合には一本の線の動きの中からも、古い要素と、新しい要素との分析とを行はうとしてゐるのである。
事実またさうした綿密な態度であつてこそ新しい日本画の確立は為しとげられる。色だけの美しさをねらつても、そこに引かれた線が古めかしいものであつては何もならない、『松』の表現力は、ひとつにはさうした企ての下に為された、必然的な単純化として到達した新しい画境とみるべきであらう。松に投じられた光りの侵入の解釈の新しさ、樹の幹の下部を急に細く描くことによつて、量感を一気に獲得したやり方の大胆不敵な方法も近来の痛快事である。また吉岡氏の『馬』の色彩の美しさ、その美しさは通り一ぺんの素通り的な見方ではなく、すこし許り画面に
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