れてゐる、妖しい画風の面白さである、彼が洋服を着用に及んで銀ブラをするところをみて、他人は彼を当世流のモダニストのやうにみてゐるらしいが、さう速断することもできない、彼は銀座は私の勉強に行くところですといつてゐる、風俗への観察のために出掛けるといふ彼の弁明をこの際正しいとしてをかう。ともあれ彼は野趣を追ふ作家ではなくて、「撞球図」などといふ近代的テーマを描く作家である、しかし公平なところ、橋本氏には昭和十一年文展の「蓮を聴く」とか、「花野」とかいふ、橋本氏の好みとする、心理分析の工夫のかゝつた作品の方がはるかに、絵に独特の香気と、気品とを盛りあげてゐる、他人の真似の出来ない工夫の仕方といふものを橋本氏の作風の中から発見することができる、近代的余韻のある作品と言つた方が、あるひはあたつてゐるだらう、橋本氏がふつと何気なく「小市民的な画材はあまり好きではないのですよ、もつと迫力のある作品を書きたい――」と口を吐いてでた言葉は、をそらく橋本氏の本音であらう、今までの処橋本氏は小市民的なテーマへ逸脱しさうな危険もずいぶんある、さうした危険性を本人がちやんと心得てゐるのだから第三者は安心をしてゐ
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