これに『蔬菜図』のやうなものを添へたら一層外人の理解を早めることができよう。この乱雑に置かれた蔬菜は、その配置の自然な状態の中で、よく個々の物質性と個々の性格とがよく生かされた作である。日本に沢山のテクニックをもつた日本画家がゐる。しかし西洋人の嗜好品であるアスパラガスを写生して送つて、西洋人の食慾を唆るやうに描ける作家が幾人ゐるかちよつと疑問だ。若い連中はこれを芸術的に描くだらう。しかし決して外人の食慾をそゝるやうな作ができず、却つて桂月氏のやうな年輩作家がその実感を巧みに出すであらうと思ふ。これは皮肉な例ではない、作画の上の真の実力の発揮は長い年期を重ねた強い洞察力をもつた眼が必要なやうである。松林桂月氏の作品の実力はさうした意味の自然洞察の逞ましさから生れたものである。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
堅山南風論
自然洞察の徹底
堅山南風論の書き出しは、堅山氏の人格論から入つてゆくのが至当なやうである、また世間でもさういふ論じ方をしてゐる、しかし世間で散見する堅山南風論が南風の人柄を賞めるといふことをやつてゐる間に、もう頁を喰つてしまつて、肝
前へ
次へ
全419ページ中35ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング