、切れ切れの線の配列にすぎないが、実感的には波を感じさせる、高木保之助氏の『早瀬の波』といふ作品があるが、これもすぐれたもので、波に対する新しい解釈が加はつたものであるが、それでも矢張り人間の解釈といふものが、画面にぶらついてゐてぴつたりと波の実感に即しない、福田氏の漣は、その点ではその制作方法を第二段の問題としても、作者が自己の立場を、自然の対象物へ全く身を投じたといふ対象との密着性がある、農学博士の内田清之助氏が昭和八年一月号の『塔影』に花鳥画と鳥類生態写真と題して色々の鳥を語り、写真を掲げてゐるが、その中で波に立つてゐる『シギ』を撮つた写真を掲げ、その写真の漣の部分だけの拡大写真と、福田平八郎氏の作品『漣』とを比較掲載して、内田博士はかう語つてゐる。
『次に出してゐる写真は、此の写真の一部を引延したもので、その次は、御承知の、帝展で評判になつた福田平八郎氏作『漣』です、之で見ても、福田画伯の観察の鋭さには敬服する(中略)よく此の双方を注意して見ますと、漣の一部に統一を破つた、複雑な線の現れてゐる所が見られますが、絵にも写真にもやはり全く同様に現れてゐます、無論漣は物理的現象ですか
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