の『漣』を描くことに於いて物理学的立場からみた波紋の研究者としても、大家のやうに思へるのである。この『漣』は全く科学的な根拠と一致してゐるといふことは、福田氏が科学人であるか、或は観察者としての徹底的態度が、偶然にもこの作品を産み出したのであるか、その何れであるか、その解明も興味ふかいものがある。科学的であればそれは近代的であるわけである、したがつて福田平八郎氏を我国唯一のモダニズム作者であるといふことができる、しかしさうでなく科学的根拠に特に立つて描いてゐるわけでなく、観察を以て方法として、それが偶然科学性と一致したといふ場合は、モダニズム作家と呼ぶわけにはいかないのである、福田平八郎氏と、吉岡堅二氏と何れがモダニズム作家であるかといふことを考へてみたら、こゝでもまた問題が起きるわけ。[#「。」に「ママ」の注記]福田氏の文展二回の『青柿』には作品に怖るべき質的昂揚があるのである、しかも吉岡氏の作品にも、同系列の質的昂揚のある作品が少くないことも注意すべきである。
科学者の認識と、芸術家の観察とが一致するといふことはあり得るのであつて、それをもつて奇とするにはあたらないが、その芸術家
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