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犬と女中
――犬と謎々のうち――
心理学者吉植吉三郎博士の家庭では女中を解雇した、この女中といふのは、博士夫人が良い女中がゐなくて困ると、出入りの植木屋の顔をみるたびに[#「たびに」は底本では「たびた」]愚智[#「智」に「ママ」の注記]をこぼすので、植木屋が自分の郷里の新潟から呼びよせたものであつた。女中が解雇されてから三日目に植木屋がやつてきた、夫人に向つて
『わたしもあの娘だけはお邸に勤まると思ひましたので、それに田舎とは申しましても、とにかく土地の補習学校も出てをりますし、さうまるつきりの愚か者とも思ひませんでしたので』
と植木屋はもみ手のやり場にこまつた、しきりに尻をもぢもぢして恐縮するのであつた。夫人は植木屋に気の毒さうな表情をした、
『実はね、あの娘は、新聞を読むのも、主人の気に入りませんでしたの――』
『ほう、新聞を読むので、御暇でございましたか、すると何かお仕事の最中にでも、終始よむのでございましたか――』
『いゝえ、仕事はまじめでしたの、なにせ主人が新聞を拝見する前に、あの娘が新聞をみるといふ悪い癖がありましてね』
『――成程』
植木屋は、
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