と爪切鋏
トロちやんは、可愛らしい嬢ちやんでした。でも、夜眠る前に、トロちやんのお家では、大きな盥《たらひ》を、お台所に持ち出して、子供達は手足をきれいに洗ふことになつて居りましたのに、トロちやんだけは、嫌やだ、嫌やだと言つて、どうしても手足を洗はせません。
これだけは、トロちやんは、悪い子でした。
そこで仕方なく、お母さんは、汚れたトロちやんの手足を、濡らした手拭で拭つてやりました。
トロちやんは、或る日、お兄さん、お姉さんと一緒に、お母さんに連れられて、近くのお地蔵さまの縁日にでかけました。
ずらりと列んだ夜店は、たいへん賑やかでした。
トロちやんは、赤いゴム風船を、買つて貰ひましたが、あまり人混みでありましたので、人に押しつぶされて、パチンと破れてしまひました。
『お母さん、絹の靴下を、買つて頂戴よう。』
トロちやんは、ベソを掻きながら、母さんの袖にぶらさがりました。
『トロちやんは、夜おねんねの時に、お手々を洗ひたがらないし、汚ない足で、絹の靴下など履いたつて駄目ですから。』
かう言つて、お母さんは買つてくれませんでした。お母さんは、金槌やらお鍋やら、帽子掛け
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