した。
ひと雨降つて晴れたと思ふまに、凄まじい大きな、ちやうど獣の咆えるやうな、風鳴りがしました。
すると森の木の葉がいつぺんに散つてしまつたのです。
――やあ、風船玉があがる。
――やあ、大風だ、大風だ。
子供達が手をうつて空を仰ぎました。
風船屋が、慌てて風船を捕まへようとしましたが、糸の切れた赤い数十のゴム風船は、ぐんぐんぐん空高く舞ひ上りました。
陽気に鳴り響いてゐた、夫婦牛の太鼓が急に、大きな音をたてて、破れてしまひました。
――爺さん。わしは急に声が出なくなつた。
――うむ、わしも呼吸《いき》が苦しくなつてきた、ものも言へなくなつてきたよ。
――爺さん、またわし達の、ひつくり返るときが、きつとやつて来たのだよ。
――ああ、さうにちがひない、体が寒むくなつてきたな、婆さん。
――では、またわし達は、別れなければならないのかい。
――さうだよ、ひつくり返るのだよ、婆さんまた何処かで、逢へるだらうから、さうめそめそ泣きだすもんぢやないよ。
一陣の寒い、冷たい風が、太鼓の破れを吹きすぎました。(昭2・3愛国婦人)
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トロちやん
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