逃げだした。
飼主が、大変驚ろいて、叫びながら後を追ひかけてきましたが、爺さん牛は腹をたてて
――お前さんは、わしの婆さん牛の手足を、材木を片づけるやうにして、何処へ隠してしまつたかい。
と爺さん牛は、飼主の背中を、ひとつ蹴飛しました、すると飼主は、『ぎやあ』と蛙の鳴くやうな声をだして、其の場にひつくり返つてしまひました。飼主は何時《いつ》までたつても、起きあがらうとせず、ぴくりとも身動きをしないので、爺さん牛は、これを見て、急にお可笑くなつたので、腹を抱へて笑ひ出しました。
*
――なあ、婆さんや、お前はわしの右足の不自由なことを、百も承知のくせに、わしの身のまはりの世話もしてくれずに、どこを飛び廻つてゐたのかい、この浮気婆奴が。
――なあ、何処《どこ》まで、お前は出掛けたのさ、赤い綺麗な上着も、どこかに忘れてきて
――お前は、急に小さくなつたなあ、こんな吹きざらしの河原で、ひとり何を考へてゐたのさ。なあ婆さんや。
爺さん牛は、かういひながら、くり返しくり返し、河原の石ころの上に、頭ばかりとなつて捨てられてあつた、婆さん牛にむかつて色々のことを質問をしましたが
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