秋の空いつぱいに、拡がつたと思ふと、額を金槌で殴られた婆さん牛は、お日様の光をまぶしさうに、二三度頭を左右に振つたと思ふと、大きな地響をして、地面に倒れました。
 倒れた婆さん牛は、太い繩のついた、滑り車で吊りあげられましたが、
 ――やあ婆さん、綺麗な衣装を着たなあ。
 と遠くに見てゐた、爺さん牛が、思はず感嘆をしたほどに、婆さん牛の姿は変つてゐました。それは美しい真赤な着物を着てゐました。
 その赤い衣装は、ぽたぽたと音して、地面にしたたり、地面に吸はれました。
 屠殺場の男が、白い刃物を光らして、婆さん牛の、その赤い衣装をはぎだしましたが、ちやうど官女の十二|単衣《ひとえ》のやうに、何枚も何枚も、赤い着物を重ねてゐました。
 ――婆さんは、いつの間に、赤い下着をあんなに多くさん着こんでゐたんだらう。
 爺さん牛は、これを見て急にお可笑くなつたので、腹を抱へて笑ひだしました。
     *
 次は爺さん牛の、ひつくり返る番がまゐりましたが、爺さん牛は、なにか知ら体中が急に寒気がしてきて、ひつくり返ることがたいへん嫌なことに思ひましたから、どんどんと逃げだしました。
 ――やあ、牛が
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