い、そのひつくり返ることだよ。
飼主は、かう言つて逃げるやうにしてどんどん行つてしまひました。
――爺さん、わしは妙に、そのひつくり返ることが嫌になつた、どんな具合に、ひつくり返るんだらう。
――婆さん、わからんな、これまでにも、わしは石につまづいて、なんべんも転んだことがあるんだが。
――こんどのは、あんなもんぢやないんだよきつと、すばらしく大きな音がするんだよ。
爺さんと婆さんは、そこで牛小舎に、大きな音をたてて、かはるがはる、ひつくり返つて見ましたが、死ぬといふことが、わからないうちに、だんだん東の方が白《しら》んでまゐりました。
*
翌朝、早くから二頭の夫婦牛は、小舎から引き出されて、飼主に曳いてゆかれました。
――旦那さま、わし達は、その死ぬといふことが、嫌になりました。
夫婦牛は、足をふんばつて、屠殺場へ行く途中、さんざん駄々をこねて、飼主をたいへん困らせましたが、飼主はいつもより、太い鞭を、ちやんと用意して来てゐて、ぴしぴし続けさまに、尻を打ちましたので、牛は泣く泣く屠殺場へ行かなければなりませんでした。
――かーん。と大きな響がして、その響が
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