うな、高い青塗りの建物が、不思議なことには、その建物には、窓も出入口もなんにもない家ばかりであるのに、街には人出で賑はつてゐました。
手品師は、きよろきよろ街を見物しながら、街の中央ごろの、広い橋の上にやつてきて、そこの人通りの多いところで、職業《しやうばい》の手品にとりかかりました。
――さあ、さあ、皆さんお集《あつま》り下さい。運命の糸をたぐれば踊りだす。
赤いシャッポの人形。
旅にやつれた機械《からくり》人形。
とかう歌つて、手品師がたくさんの人を集めて、さて手品にとりかからうとすると、手品師は、たいへんなことが出来あがつたと思ひました。それは大切《だいじ》な大切《だいじ》な、職業《しやうばい》道具のはひつた、手品の種の袋を船の中に置き忘れてきてしまつたのです。
手品師は上陸するときには、青い船が岸を離れて、下流に辷つて行つたことを知つてゐます。
手品師は、見物人の前でしばらく思案をいたしました。
――さあ、手品師、手際《てぎは》の鮮やかなところを見せておくれよ。
――へい、そんな事は容易《たやす》いことで、わたしは、子供の時からこの歳《とし》まで三十年間も
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