牛の技競《うでくら》べをするのやら、馬術をおめにかけるのやら、さつぱりわかりませんでした。
 この三人の騎士達も、この思ひもかけない幸福にめぐり合ふとして旅をつゞけてゐる若者でありました。
 三人の騎士達が、野原のまん中までやつてきたときに、とつぷりと日が暮れてしまひました。
 黒い騎士は、こんなに日が暮れては路《みち》がわからないから野宿をしようと、二人の騎士にむかつて言ひました。
 ところが後の二人の白い騎士と、青い騎士とは、明るいうちは、それは強さうなことを言つてをりましたが、とつぷりと日がくれてしまつては、急に怖気《おぢけ》がついて一歩も馬の足をすゝめることができなくなりました。
 それにこんな野原のまんなかに野宿などをしては、さびしくて堪らないと考へましたので、黒い騎士に反対をしてとにかく、行けるところまで馬を進めようと言ひました。
 しかたなく黒い騎士は、二人の言ふ通りに、夜どほし歩くことにいたしました。
 白い騎士と、青い騎士は、頭上をとぶ名も知れない怪鳥の叫び声にも、しまひにはふるへる程の臆病の本性を現はしてしまひました。
 黒い騎士は、臆病な、二人を追ひ立てるやうには
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