げまし、はげまし路を急いでまゐりますと、ふいに三人の馬の鼻先で、それは大きな法螺の貝の響がいたしましたので、白い騎士と青い騎士とは、驚ろいてきやつと言ふなり棒立ちになつた馬から落つこちましたが、大胆な黒い騎士はさつそく、半弓をもの音のあたりに、ひやうと射放しました。しかし不思議な物音はそれきりきこえませんでした。
 二人の騎士はます/\怖気がついて、果ては一歩もあるくことができなくなりました。
 ところが、ちやうど幸ひなことには、はるか遠くに人家のあかりがひとつ見えましたので、三人はたいへん元気づいて馬をすゝめました。

    二
 広い野原のまんなかに建つた、大きなお寺の、高い窓から、光がもれてくるのでありましたが、そのお寺は久しい間人が住んでゐなかつたと見え、壁は崩れかけて、いかにも古めかしい建物でありました。
 たどりついた三人の騎士は、とんとんと朽ちかけた扉をたゝきましたが、なかゝらは何の返事もありませんでした。
 短気な黒い騎士は、力いつぱい扉をひきましたが、扉はなんの戸締りもなかつたので、それは苦もなくやす/\とひらかれました。
 そこは天井の高い第一の部屋になつてをりま
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