である王城のある街へ、せつせと旅をつゞけてをりましたが、三人の住んでゐた街から、王城までは、かなりの里程《みちのり》がありましたし、それに広々とした野を横切らなければなりませんでした。
 騎士達の住んでゐた街の、いたるところの街角に奇妙な木の札《ふだ》が建てられたのは、ついこの間のことでありました。
 それはこの国でいちばん勇ましい騎士に王様が、たつた一人よりない可愛い王女をくれるといふ、立字《たてじ》が書き綴られてあつたのです。
 もと/\この国の王様には、王子のないことを臣民は知つてをりました。
 それで若い騎士達は、争つて王城をさして押しかけました。美しい王女さまを貰つた上に、この国の王様の世継となつて、やがてはおびたゞしい土地と、人民を統御することを想つては、若い騎士達はじつとしてゐることができませんでした。
 そしてぞく/\と押しかけた騎士達は、王宮の前庭にたくさん集りました。
 たゞ騎士達は、この多数の自分達の仲間から、たつた一人の幸福な候補者を王様はどんな方法で、お選びになるかといふことが、だれにもわかりませんでした。
 王様の御前で、勇ましい真剣勝負をするのか、または闘
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