く》れて来ました。
 皆の馳けつけた頃には、母親の腹痛は、だいぶよくなつて居りました。
 母親はアマム・エチカッポが、誰よりもまづ先に飛んできて呉れたので、たいへん喜びました。
 いまでも雀の嘴《せ》のあたりの黒いのはこのとき墨の容物《いれもの》を投げた、墨が垂れてついたもので、羽にぽつ/\と、黒い斑点のあるのは、墨の散つてついたのだといふことです。
 母親はアマム・エチカッポの孝行に感じて
『お前は、一生のうち、アマム(米又は粟)[#底本の『米又は粟』から変更]を喰べて暮らしなさい。』と言ひました。
 そして親不孝のイソクソキには
『お前の不孝者には[#「お前のような不孝者は」か?]、一生涯腐つた木を突ついて、虫をお喰べなさい。』と言ひました。
 それからと言ふものは、雀は清浄《きれい》な米や粟を、啄木鳥は、腐れた木から虫を探して喰べるやうになりました。
 今でも愛奴《あいぬ》達は、余り家のちかくの樹に、イソクソキが来て、虫を探すことを喜びません、そして灰をまいてこの不浄な鳥のちかよつたことを、清める習慣があります。(大14・11愛国婦人)

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珠を失くした
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