うお嫁さんの自画像は、王城の塀《かべ》の中に落ちてしまひました。トムさんは泣く泣く家に帰りました、そしてその訳をお嫁さんに話しました、お嫁さんは『あんな絵はいくらでもかいてあげませう。』とトムさんをなだめました。
お城の塀《かべ》の中に落ちた自画像は、兵士が拾つてこれを王様に差上げました。
王様はこの画をひとめ御覧になつて、あまりの美しさにお驚きになりました。
いたつてわがままな王様は、まだお妃《きさき》がありませんでしたから、この画《ゑ》の女を、是非探し出して連れて参れと、一同の兵士に厳重に命令いたしました。
城中の兵士が総出で探したあげく、この画の主はトムさんのお嫁さんとわかりました。
王様はトムさんに『余の妃に差出すやうに。』と命令いたしました。
万一命令をきかなければ、トムさんの首を切りかねない権幕なので、トムさんは悲しくなつて泣き出しました。
お嫁さんは『さあ泣いてはいけません、私達に運が向いてきたのです。私はこれから王様の妃になります、しかし心配をしてはいけません、私はあなたの永久のお嫁さんです。私が王様の御殿へいつてから、近いうちに、お城の門が開かれる日が御
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